15. 仕様

注釈

本章は Quloud Ver.7.0.1 を対象としています。記載内容の確認日は 2026 年 10 月 6 日です。



15.1. 計算エンジンと機能

Quloud で利用できる計算エンジンと機能の対応は はじめに の章に掲載しています。


15.2. 「ジョブ作成」で選べる計算機能

「ジョブ作成」では「計算ソフト」と「計算機能」の組み合わせを選びます。選べる組み合わせは 次の 48 通りです。「実行されるステップ」は、その組み合わせを選んだときに順に実行される 計算です。

計算ソフト

計算機能

機能コード

実行されるステップ

Quantum ESPRESSO

自己無撞着電子状態計算(SCF)

scf

自己無撞着電子状態計算(SCF)

Quantum ESPRESSO

構造最適化

geometry_opt

構造最適化

Quantum ESPRESSO

格子定数最適化

lattice_opt

格子定数最適化

Quantum ESPRESSO

固定ポテンシャル電子状態計算

nscf

自己無撞着電子状態計算(SCF) → 固定ポテンシャル電子状態計算

Quantum ESPRESSO

電子バンド構造

band_structure

自己無撞着電子状態計算(SCF) → 固定ポテンシャル電子状態計算(バンド) → 電子バンド構造

Quantum ESPRESSO

NEB(Nudged Elastic Band)

neb

NEB(Nudged Elastic Band)

Quantum ESPRESSO

状態密度計算(DOS)

dos

自己無撞着電子状態計算(SCF) → 固定ポテンシャル電子状態計算 → 状態密度計算(DOS)

Quantum ESPRESSO

投影状態密度(PDOS)

projected_dos

自己無撞着電子状態計算(SCF) → 固定ポテンシャル電子状態計算 → 投影状態密度(PDOS)

Quantum ESPRESSO

フォノンバンド分散(matdyn)

matdyn_disp

構造最適化 → フォノン計算 → 力定数計算(q2r) → フォノンバンド分散(matdyn)

Quantum ESPRESSO

フォノン状態密度(matdyn)

matdyn_dos

構造最適化 → フォノン計算 → 力定数計算(q2r) → フォノン状態密度(matdyn)

Quantum ESPRESSO

X線吸収スペクトル(XSpectra)

xspectra

X線吸収スペクトル用 SCF → X線吸収スペクトル(XSpectra)

OpenMX

自己無撞着電子状態計算(SCF)

scf

自己無撞着電子状態計算(SCF)

OpenMX

構造最適化

geometry_opt

構造最適化

OpenMX

格子定数最適化

lattice_opt

格子定数最適化

OpenMX

電子バンド構造

band_structure

電子バンド構造

OpenMX

状態密度計算(DOS)

dos

状態密度計算(DOS)

OpenMX

第一原理分子動力学

fp_md

分子動力学

OpenMX

NEB(Nudged Elastic Band)

neb

NEB(Nudged Elastic Band)

OpenMX

交換結合パラメータ

exchange_coupling

自己無撞着電子状態計算(SCF) → 交換結合パラメータ

RSDFT

自己無撞着電子状態計算(SCF)

scf

自己無撞着電子状態計算(SCF)

RSDFT

構造最適化

geometry_opt

構造最適化

RSDFT

格子定数最適化

lattice_opt

格子定数最適化

RSDFT

電子バンド構造

band_structure

電子バンド構造

RSDFT

状態密度計算(DOS)

dos

状態密度計算(DOS)

RSDFT

第一原理分子動力学

fp_md

分子動力学

ASE-MD

構造最適化

geometry_opt

構造最適化

ASE-MD

格子定数最適化

lattice_opt

格子定数最適化

ASE-MD

機械学習ポテンシャル MD

ml_md

機械学習ポテンシャル MD

ASE-MD

NEB(Nudged Elastic Band)

neb

NEB(Nudged Elastic Band)

LAMMPS

古典分子動力学

classical_md

古典分子動力学

LAMMPS

構造最適化

geometry_opt

構造最適化

FLARE + Quantum ESPRESSO

On-the-fly 機械学習ポテンシャル生成

ml_ff

機械学習ポテンシャル MD → 自己無撞着電子状態計算(SCF)

Quloud-Mag

LLG ダイナミクス

llg_dynamics

LLG ダイナミクス

Quloud-Mag

モンテカルロ磁性計算

monte_carlo_mag

モンテカルロ磁性計算

SPRKKR

自己無撞着電子状態計算(SCF)

scf

自己無撞着電子状態計算(SCF)

SPRKKR

交換結合パラメータ

exchange_coupling

交換結合パラメータ

GROMACS

構造最適化

geometry_opt

構造最適化

GROMACS

古典分子動力学

classical_md

古典分子動力学

HybMD

機械学習ポテンシャル MD

ml_md

機械学習ポテンシャル MD → 自己無撞着電子状態計算(SCF)

RadonPy

高分子密度

polymer_density

QM構造最適化 / RESP電荷 → 高分子平衡化MD

RadonPy

ガラス転移温度

polymer_tg

QM構造最適化 / RESP電荷 → 高分子平衡化MD → ガラス転移温度

RadonPy

熱伝導率

polymer_tc

QM構造最適化 / RESP電荷 → 高分子平衡化MD → 熱伝導率

RadonPy

ヤング率(機械特性)

polymer_elong

QM構造最適化 / RESP電荷 → 高分子平衡化MD → ヤング率(機械特性)

RadonPy

複素誘電率

polymer_dielectric

QM構造最適化 / RESP電荷 → 高分子平衡化MD → 複素誘電率

Psi4

自己無撞着電子状態計算(SCF)

scf

自己無撞着電子状態計算(SCF)

Psi4

構造最適化

geometry_opt

構造最適化

Psi4

分子振動解析

frequency

構造最適化 → 分子振動解析



15.3. 注意事項



15.3.1. 計算 Job 実行時の注意事項(全般)

AWS の計算リソースの在庫切れにより、「Run」ボタンをクリックしても数時間 Status が「Preprared」のままになる場合がございます。

Job が失敗しているにもかかわらず、Status が Succeeded になってしまう場合がありますのでご注意ください。



15.3.2. Ver.7.0 での変更点


  • Job の実行中も、出力ファイルの一覧やログ、Status は Job 詳細画面を開いている間 自動で更新されます(入出力ファイルとログ ・ 計算 Job の実行 の章)。ただし転送前のファイルは 名前・サイズ・更新日時のみで、中身の表示・ダウンロードは計算の完了後になります。

  • Quantum ESPRESSO の Job で計算が収束しなかった場合、Job の Status が Failed になります。 電子バンド構造・状態密度計算など複数のステップからなる計算では、SCF 計算が収束しなかった 時点で以降のステップは実行されません。

  • 出力されるべきファイルが揃っていない Job には、Status とは別に結果コードが付きます。Job の Status 自体は変わりません。

  • Ver.6.1.2 以前に作成した Job と、Ver.7.0 で作成した Job とでは、Job 詳細ページおよび Edit Job ダイアログの表示内容が異なります。

  • 移行前に作成された一部の Job では、Job 一覧の Material 欄が空欄のまま表示されます。



15.3.3. ソフトウェア別注意事項

以下、注意事項をソフトウェア毎に記載します。



15.3.3.1. Quantum ESPRESSO に関する注意事項

すべての Job につきまして、Thread 数を増やすと計算時間が長くなる場合がございますのでご注意ください。

Ver.7.0.0 では、交換相関汎関数で HSE06 の指定ができなくなっています。

コリニア磁性 / ノンコリニア磁性計算での初期スピンは、Quantum ESPRESSO の場合、元素ごとにしか設定できません。 「スピン」でコリニア磁性またはノンコリニア磁性を選ぶと、「擬ポテンシャル」の節に元素ごとの「初期スピン(starting_magnetization)」欄が表示されますので、そこで指定してください。Ver.6.1.2 以前に作成した Job で、同じ元素の原子ごとに異なる値を設定していた場合には、その平均値が採用されますのでご注意ください。

金属的な物質を計算した場合、価電子帯上端・伝導帯下端・バンドギャップの表示が適切でない場合があります。Quloud は対象の物質が金属的かどうかを判定していないため、半導体・絶縁体と同じ形式でこれらの値を表示します。価電子帯上端の値が伝導帯下端の値より大きく表示される等、不自然な表示になることがありますので、あわせてバンド構造の図もご確認ください。

擬ポテンシャルファイルなど、ファイルをご自身でアップロードする際にファイル名として使用できるのは、英数字・日本語(漢字・かな等)・.``(ピリオド)・-(ハイフン)・``+``(プラス)・``_``(アンダースコア)です。これら以外の記号(空白や括弧など)が含まれる場合は自動的に ``_ に置き換えられますので、意図した名前になっているか、アップロード後にご確認ください。

X線吸収スペクトル(XSpectra)では、下記の点にご注意ください。

  • 「スピン」ではノンコリニア磁性を選べません。X線吸収スペクトルの計算がノンコリニア磁性に対応していないためです。

  • Ver.6.1.1 以前の入力ファイルを読み込むと、吸収サイトの情報が正しく反映されませんので、計算を実行する場合には Ver.6.1.2 以降で新しく Job を作成してください。

  • 格子ベクトル間角度が 90° ではないマテリアルでは、X-Spectra の四重極計算をデフォルト設定のまま実行すると、X 線 k ベクトルと X 線偏極ベクトルとの直交性が満たされず、異常終了してしまいます。

    X 線 k ベクトルと X 線偏極ベクトルの各成分は、Cartesian 座標基準ではなく、マテリアルの格子ベクトル (a1, a2, a3) の係数 (n1, n2, n3) として解釈されます。そのため、

    • X 線 k ベクトル:(0 0 1)

    • X 線偏極ベクトル:(1 0 0)

    というデフォルト設定では、この2ベクトルはそれぞれ a3, a1と同一になります。例えば Si (mp-149) の構造ですと、この2ベクトルのなす角が 60° なので、計算を実行すると

    ERROR: xkvec and xepsilon are not orthogonal
    

    というエラーが出てしまいます。このようなケースでは、2ベクトルの直交性が満たされるよう、計算実行前にご自身で設定変更をお願いいたします。



15.3.3.2. OpenMX に関する注意事項

OpenMX では計算の際に擬原子基底関数を用いますが、対応している原子の種類が限定されているため、Job 登録・実行の際には OpenMX Ver.3.9 ユーザーマニュアル(https://www.openmx-square.org/openmx_man3.9jp/openmx3.9_jp.pdf)の Table 1 と Table 2 をご参照ください。

Exchange Coupling Parameters では、MPI Process 数がデフォルトの 1 のままだとエラーが出てしまいますので、MPI Process 数を増やして実行してください。



15.3.3.3. RSDFT に関する注意事項

モデルのサイズが大きい場合や、重い元素を含む場合には、メモリ不足によりエラーが出てしまいますので、Thread 数を増やして計算を実行してください。ただし、Thread 数を増やすと計算時間が長くなる場合がございますのでご注意ください。 また、Thread 数を増やし過ぎた結果、エラーが出てしまう場合もございますので、ご自身で適切な Thread 数を設定してください。

入力ファイルの直接アップロードによる Job 実行に関しまして、初期スピン設定ファイル「fort.980」がアップロードできない状態となっておりますのでご注意ください。



15.3.3.4. LAMMPS に関する注意事項

計算 Job 登録時に原子間ポテンシャルファイルをご自身でアップロードする場合、アップロード可能なファイル形式(拡張子)が下記に限定されておりますのでご注意ください。

  • '.eam'

  • '.meam'

  • '.tersoff'

  • '.tersoff.mod'

  • '.tersoff.modc'

  • '.ann'

  • '.flare'

アップロードした原子間ポテンシャルファイルは、Job の作成後に Edit Job ダイアログで変更できません。別のファイルを使う場合は、新しく Job を作成してください。

原子間ポテンシャルに SevenNet・FairChem UMA を指定した場合、CPU 区分・HPC 区分では 1 プロセス(MPI プロセス数 1、HPC 区分は 1 ノード)で実行され、vCPU はスレッド数として使われます(計算 Job の実行 の章)。

モデルのサイズが大きい場合、CHGNet のポテンシャルを利用するとメモリ不足によりエラーが出てしまいますので、Thread 数を増やして計算を実行してください。ただし、Thread 数を増やすと計算時間が長くなる場合がございますのでご注意ください。

Molecular Dynamics では、下記の点にご注意ください。

  • MD Steps を多くとり過ぎると、メモリ不足により Atomic Structure Trajectory のアニメーションが表示されなくなります。

  • Ver.6.1 より、Mean-Squared Displacement (msd) のデータを出力するファイル名が変更となり、その影響で、Ver.6.0 以前での msd のデータがグラフ表示されなくなっております。

Molecular Dynamics の温度・圧力の設定は「温度スケジュール」欄に一本化されています。

機械学習ポテンシャルに FairChem UMA を指定し、アンサンブルを NVT にした場合、温度スケジュールに複数の区間を指定するとエラーになります。単一区間であれば実行できます。



15.3.3.5. GROMACS に関する注意事項

GROMACS には、トポロジーファイル(力場・原子間結合の定義)をアップロードする欄はありません。入力した結晶構造から、AmberTools(GAFF2 力場・AM1-BCC 電荷)を用いて自動的に生成され、力場や電荷計算手法をユーザーが選択・変更することはできません。

対象は有機分子の単一物質・混合系です。水も GAFF2・AM1-BCC でパラメータ化されるため、TIP3P・SPC 等の標準的な水モデルとは結果が異なります。生体分子力場や、金属・周期的な共有結合ネットワークを持つ構造には対応していません。水素原子を含まない構造は入力できません。

対応していない元素を含む構造は、Job の作成時ではなく実行時にエラーとなります。

トポロジーの自動生成には、分子種 1 つあたり最大で 10 分程度かかることがあります。その間は進捗が表示されませんが、そのままお待ちください。

構造最適化が最大ステップ数までに収束しなかった場合、Job の Status は Succeeded のままですが、ジョブ詳細画面の計算結果の判定が警告(warning)となり、収束しなかったことが表示されます。結果を利用する前にご確認ください。

Ver.7.0.1 より前に作成し、まだ実行していない古典分子動力学の Job のうち、アンサンブルが NPT のもの、または温度制御アルゴリズムが Berendsen のものは、そのまま実行するとエラーになります。新しく Job を作成し直してください。



15.3.3.6. RadonPy に関する注意事項

RadonPy の Job は、SMILES 情報を持つ Material でのみ作成できます。対象は、あらかじめ用意されたポリマープリセットから登録した Material だけで、それ以外の方法(PubChem 検索、結晶構造ファイルのアップロード等)で登録した Material では選択できません。

スレッド数・MPI プロセス数・GPU 使用の有無を指定する項目はありません。これらはソフトウェア側の既定値で自動的に決まります。



15.3.3.7. ASE に関する注意事項

機械学習ポテンシャルのプロバイダーで fairchem を指定した場合、MPI Process 数がデフォルトの 1 のままだとエラーが出てしまいますので、MPI Process 数を増やして実行してください。

Energy Barrier (NEB) では、セルのデータが初期構造と終期構造で完全に一致していないとエラーが出てしまいますのでご注意ください。



15.3.3.8. FLARE に関する注意事項

On-the-Fly MD では、Site property settings の spin 項目での各原子の初期スピンの設定、および constraint 項目での各原子の拘束条件の設定が無効となりますので、ご注意ください。



15.3.3.9. HybMD に関する注意事項

Thread 数を増やしても計算時間は短縮されず、かえって長くなる場合があります。計算時間を短縮したい場合は、Thread 数ではなく MPI Process 数を増やしてください。

MLIP 計算デバイスは CPU のみで、GPU は選択できません。

Edit Job で継続計算用ファイル(トラジェクトリファイル・密度ファイル)の一方だけを差し替えた場合、もう一方の欄には既に何が添付されているかが画面に表示されません。ファイルを差し替える際はご注意ください。

継続計算では、ファイルを直接アップロードする方法のほか、完了した Job を選んで続きを計算する「Continue Job」も利用できます(計算 Job の実行 の章)。「Continue Job」では、擬ポテンシャルファイルを含む元の Job の入力一式がそのまま引き継がれます。



15.3.3.10. Psi4 に関する注意事項

Psi4 は結晶(Crystal)の Material では選択できません。分子系の Material のみが対象です。

参照波動関数(Reference)に ROHF を選んだ場合、組み合わせられる計算手法は HF または MP2 だけです。DFT 系の交換相関汎関数とは組み合わせられません。画面の選択肢自体は絞り込まれないため、この組み合わせのまま「作成」(「ジョブを編集」では「保存」)を押すとエラーになり、Job は作成・保存されませんのでご注意ください。

基底関数系によっては対応していない元素があり、その組み合わせで Job を作成・編集(保存)しようとするとエラーになります。



15.3.3.11. SPRKKR に関する注意事項

SPRKKR では、Conventional Cell での計算を想定していないため、結晶構造の対称性情報の読み込みでエラーが出てしまう場合がありますので、モデリングの際にはなるべく Primitive Cell を使用してください。

SCF 計算では、反復回数の上限に達した場合でも Job の Status は Succeeded のまま完了します。収束したかどうかは、Status だけでなく反復回数や計算結果の値もあわせてご確認ください。

交換結合パラメータ(JXC)の計算結果は、ステップ 2(交換結合パラメータ)のタブに表示されます。「結果を解析」の直後はステップ 1(SCF結果選択)のタブが選ばれた状態になりますので、キュリー温度などの結果をご覧になる場合はステップ 2 のタブを選び直してください。



15.3.3.12. Quloud-Mag に関する注意事項

モンテカルロ磁性計算は、あらかじめ SPRKKR で計算した交換結合パラメータ(JXC)の Job を選んだうえで実行します。交換結合定数(J_ij)は選んだ Job の計算結果から自動的に引き継がれるため、この画面自体で J_ij の値を入力する項目はありません。

LLGダイナミクスは SPRKKR の計算を経由せず、Material の構造だけを入力として実行できます。